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米国で「社長うつ」が広がっている——なぜ彼らは病院ではなくセルフコーチングを選ぶのか

2025/12/19
米国で「社長うつ」が広がっている——なぜ彼らは病院ではなくセルフコーチングを選ぶのか

【ニューヨーク=ビジネスリサーチ・チーム】

いま、米国ビジネス界のトップを走る経営者たちの間で、ある現象が静かに広がっている。「Executive Blue(エグゼクティブ・ブルー)」——いわゆる「社長うつ」だ。

傍から見れば、成功の真っただ中にいるリーダーたち。でも実は、人知れず虚無感や行き詰まりに苦しんでいる。

ただ、彼らの多くは心療内科には行かない。カウンセラーに弱音を吐くこともない。代わりに選んでいるのは「セルフコーチング」という、ある意味とても彼ららしい、攻めの解決策だ。


1. メンタルケアは「治すもの」から「投資」へ

これまで「うつ」といえば、マイナスをゼロに戻すための「治療」だった。お金も時間もかかるコストとして捉えられてきた。

でも、シリコンバレーやウォール街のトップ層の間では、この考え方はもう古い。

彼らにとってメンタルを整えることは、最新のデバイスを揃えたり、優秀な人材を採用したりするのと同じ——「投資」なのだ。会社にとって一番大事な資産は何か。それは「CEOの判断力」。だからこそ、脳のパフォーマンスを最大化することに惜しみなく時間を使う。

この「攻めの姿勢」が、エグゼクティブ・ブルーへの向き合い方を大きく変えた。


2. なぜ「病院」には足が向かないのか

優秀なリーダーほど、既存のカウンセリングや病院を避けたがる傾向がある。そこには、経営者ならではの3つの壁がある。

プロとしてのプライド ずっと「問題を解決する側」として生きてきた人たちだ。一方的にケアされる「患者」という立場は、自分が自分でなくなるような感覚になる。

話が通じない 何千人もの雇用を抱え、何兆円という市場と向き合うプレッシャー。それがどれほどのものか、経営の現場を知らないカウンセラーにわかってもらおうとすると、説明だけで疲れてしまう。

時間がもったいない 秒刻みでスケジュールが埋まっている経営者にとって、通院のために時間を空けること自体が、大きなロスになる。


3. 「部下には絶対に弱みを見せられない」——あるファンドマネージャーの本音

ニューヨーク・ミッドタウンで働くヘッジファンドのシニアマネージャー、マークさん(仮名・45歳)。数十億ドルを運用する彼も、エグゼクティブ・ブルーを経験した一人だ。

「お客さんの資産を1%減らすことが何を意味するか——毎秒、そのプレッシャーと戦っています。でも、部下に『今日はちょっと気持ちが沈んでて』なんて、口が裂けても言えない。彼らは僕に『絶対的な正解』を求めている。弱さを見せた瞬間、チームの信頼は崩れます」

周囲からはカウンセリングを勧められたが、即座に断ったという。

「平日の昼間に1時間もオフィスを離れて、会ったこともない人に自分の生い立ちを話す? そんな時間の使い方はあり得ない。僕が必要だったのは、マーケットが開いている間も冷静に判断できる『脳のメンテナンス』であって、同情じゃなかった」

その後、セルフコーチングに切り替えたマークさんは、わずか数週間でパフォーマンスを取り戻した。

「セルフコーチングは、エンジンをかけたまま車を修理するようなもの。誰にも知られず、1分も無駄にせず、頭の中のバグを直せる。この効率の良さこそ、僕たちみたいな人間に必要な唯一の解決策だった」


4. 注目を集める新メソッド「Re:CODE」

いま、マークさんのように「自分の力で乗り越えたい」と考えるトップ層の間で、密かに広まっているメソッドがある。**「Re:CODE(リコード)」**だ。

Re:CODEは、ありがちな精神論やポジティブシンキングとは違う。

自分の頭の中に長年染みついた「古い思考のクセ」を見つけ出し、それを今のビジネス環境に合った形に書き換えていく——いわばプログラミング的なアプローチだ。

「なぜ、自分はこの場面で落ち込むのか?」

この問いを感情的にではなく、ロジカルに分解していく。そして、自分だけのルールを作り直す。この「システム的なやり方」が、論理的思考を得意とする経営者たちのプライドにフィットし、支持を集めている。


5. 自分のメンテナンス、後回しにしていないか

組織を率いる人間が、自分自身のケアを後回しにしていいのか——その問いに、米国の経営者たちは動き始めている。

セルフコーチングは、その答えのひとつだ。

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